白露
9月7日は、二十四節気の「白露」。
朝晩の空気が少しずつ冷たさを帯び、草木の葉先に白く露が結びはじめる頃です。
日中にはまだ夏の名残がありながら、朝夕には涼やかな風が通り、田畑では稲穂が実りへと向かう。
夏から秋へ。
季節が静かに、その表情を変えていく頃です。
「露の世は 露の世ながら さりながら」
小林一茶の句に詠まれた「露」。
朝、草木の上に現れ、陽が昇ればいつしか消えていく露は、古くから、儚さや移ろいゆくものの象徴として詩歌の中に詠まれてきました。
消えてしまうと知りながら、それでも、その美しさに心を留める。
わずかな時の中にあるものを見つめる、日本人の感性が「露」という言葉には宿っているように思います。
そして9月9日は、「重陽の節句」。
古くには、重陽の前夜、菊の花に綿を被せ、翌朝、その露と菊の香りを含んだ綿で身体を拭い、無病息災や長寿を願う「着綿(きせわた)」という風習がありました。
朝露の一滴にも季節を見つけ、そこに願いを重ねる。
田畑の色の変化。
朝の空気の冷たさ。
草木の葉に光る、一粒の露。
目には捉えにくい季節の移ろいを、日々の小さな変化から感じ取ることもまた、秋を迎える愉しみのひとつなのかもしれません。
そんな白露の頃に合わせて、玉露紅茶に、焙煎したブルーベリーの茎、生姜を重ねました。
口に含むと、まず感じられるのは、玉露紅茶ならではのやわらかな旨味。
そこへブルーベリーの茎を焙煎することで生まれる香ばしさが重なり、大地や香木を思わせる、深く落ち着いた香りが広がります。
その奥から、ふと現れるのは薔薇を思わせる華やかで優雅な香り。
味わいには、熟したチェリーのような果実味と、メープルを思わせる穏やかな甘みがあり、生姜のほのかな温かみが全体を包み込みます。
そして最後には、柑橘の皮を思わせるほろ苦く爽やかな香りが残り、ゆっくりと余韻へと変わっていきます。
香ばしさ、甘み、華やかさ、そして温かさ。
幾重にも重なった香りと味わいが、一口ごとに少しずつほどけていく一杯です。
急がず、少しだけ時間をかけて、お茶と向き合う。
朝露がわずかな時間だけ草木の上に姿を現すように、一杯の中にも、その時にしか出会えない香りがあります。
季節の移ろいに耳を澄ますように。
白露の頃、ゆっくりと味わっていただきたい一杯です。