処暑
8月23日は、二十四節気の「処暑」。
「処」には、暑さがおさまるという意味があります。
厳しい暑さが峠を越え、朝夕の風の中に、少しずつ秋の気配が混じりはじめる頃です。
日が暮れると、コオロギや鈴虫の声が聞こえはじめ、まだ暑さの残る夜にも、季節が次へと移ろいはじめたことを、そっと知らせてくれます。
そんな処暑の頃に合わせて、黒茶になつめ、レモンの皮、スペアミントを重ねました。
湯を注ぐと、まず立ち上がるのは、なつめのやわらかく、どこかミルキーな香り。
湯気の立つ温かなミルクを思わせるその香りに、黒茶の熟成した風味が重なり、ほのかに梅を思わせる穏やかな香りが現れます。
そこへレモンの皮の明るい柑橘香と、スペアミントの涼やかな香りを添えました。
口に含むと、黒茶となつめが重なり、黒蜜を思わせるまろやかな甘みが広がります。
その奥から黒茶のやわらかな酸味が現れ、次第にラズベリーのような甘酸っぱい表情へ。
最後にはスペアミントの清涼感が、ハッカを思わせるようにすっと鼻へ抜け、静かな涼を余韻に残します。
処暑の七十二候は、綿の実を包む萼が開きはじめる「綿柎開(わたのはなしべひらく)」から始まります。
やがて暑さがようやく鎮まっていく「天地始粛(てんちはじめてさむし)」を経て、穀物が実りはじめる「禾乃登(こくものすなわちみのる)」へ。
夏の陽を受けて育った草木は、花の季節を終え、少しずつ実りの時を迎えます。
古くから人々は、風の温度、虫の声、草木の姿といった自然のわずかな変化に目を向け、七十二候という細やかな暦に、季節の移ろいを映してきました。
夕暮れの風に耳を澄ませ、虫の音に秋の訪れを感じるように。
一杯のお茶の香りや味わいの中にもまた、季節の気配はそっと宿ります。
夏の名残を感じながら、これから訪れる秋を待つ。
暑さと涼しさが行き交う処暑の夕べに、ゆっくりと味わっていただきたい一杯です。